サイドストーリー

ナインブレイカー 〜閑話休憩〜

Out Town特別治療総合病院

花束を持った女性が、受付に居た。
(・・・はぁ。初めてのカークさんとの仕事があんなふうに終わるなんてなぁ・・・。)
(私がもっとしっかりオペレートすればあんなことにはならなかったのかなぁ。)
面会の手続きをしながら、リェスはため息をつく。
(とりあえず今は早くカークさんに治ってもらわないと・・・)


Out Town特別治療総合病院 駐車場

果物の詰め合わせを持った女性が、駐車場に居た。
(・・・例え一時の事とはいえ、私を超える力を持つヤツ・・・)
ACと同じ真っ赤な車の扉を閉めながら、ナーは思案する。
(過去を亡くした男・・・久しぶりに興味を持った男・・・)
(長い付き合いになりそうだな・・・)


第1病室

「・・・すー・・・・すー・・・」
規則正しい寝息が病室に静かに響く。
薬の影響で先ほど眠ったカークは、またいつもとは違った顔をしていた。
「フフ・・・やっぱり、可愛いわ。」
ウィスティールはいつもと同じように、カークの見舞いに来ていた。
(・・・カーク・・・)
この前カークに言われた言葉を思い出しウィスティールは微笑む。
そして、眠っているカークに口付けをしようと顔を近づけ・・・

「こんにちは〜。カークさ・・・」
花束を持ったリェスは、カイと同じく最高のタイミングで病室へと入る。
「ウィ、ウィ、ウィスティールさんっ!カークさんに何をしようとしたんですかぁ!」
顔を真っ赤にしながらウィスティールを指差す。
「あら・・・何をって。キ・ス♪ に決まってるじゃな〜い?」
「よっ、よくもまぁぬけぬけとぉ〜〜!」
「だって眠っちゃってるんだし・・・こんなチャンスは滅多に無いし。」
「それでも同意も無しにそんなことしちゃいけませんよぉ!」
リェスは手に持った花束をぶんぶん振り回しながらウィスティールに対抗する。
「ん〜。リェスちゃんもカークの事・・・好きなのかしら?」
「〜〜〜!まっ、またそういう風に話を誤魔化そうとする〜!」
そこでウィスティールは、ぶんぶん振り回されている花束の向こうに人が居るのを見つける。
「・・・すまないが、中に入れてくれないか?」
「えっ?あ!ナーさん!」
ナーは部屋に入るなり、カークへとツカツカと近づいていく。
果物の入ったカゴを置き、カークを見つめる。
「・・・寝ているのか?残念だ。」
その言葉を聞き、二人が思案をめぐらせる。 

     (もっ、もしかしてナーさんもカークさんのことが好きに!?)

     (・・・カークに興味を持ったみたいね・・・)

「と・に・か・く!ウィスティールさんは抵抗できない人にそういうことをしちゃいけません!」
ビシ!と花束をウィスティールにつきつけ、言い放つリェス。
「・・・ん。なんだ・・・?」
「あ・・・カーク。起こしちゃったわね。」
この騒ぎで眠りから覚めたカークは自分の現在の状況を把握する。
「・・・見舞いにきてくれたのか。」
「カークさん、コレ!」
顔を赤らめながら、花束を突き出すリェス。先ほどのウィスティールの言葉に少なからず影響されているようだ。
「ああ、ありがとう。」
その横では、素早い手つきでリンゴの皮を剥いている女性がいた。
「出来たぞ。口を開けろ。」
ナーはナイフに刺したリンゴをカークへと近づける。
「ん?リンゴくらい自分で・・」
「口を開けろと言っている。」
有無を言わさぬ迫力に、カークはしぶしぶリンゴを頬張る。
「美味いよ。ありがとう。」
その言葉を聞き、ナーは初めて「笑顔」らしきものを見せた。
「・・・!」
カークは一人驚いていたが、他の二人には見えておらず何故驚いているのか「?」という顔をしていた。

「そうだ!カーク、リェスちゃんに言ってあげてよ!」
唐突に切り出したウィスティールはこれまたとんでもない事を言い出す。
「この前あたしに言ってくれたコト・・・今、ここで・・・」
私には聞こえなかったこの前のカークの言葉。それを今ここで言えというのだ。
「・・・!断る!」
カークは一言そういうと、布団を頭から被る。

「え?カークさん何て言ったんですか??」
「クライムに何か言ったのか?」

と、ナーとリェスは同時にカークへと問いただす。
「・・・すー・・・すー・・・」
カークは無駄な抵抗とわかっているものの、狸寝入りをはじめる。
布団の外では、ナイフが風を切る音・リェスのハイヒールが近づく音・・・
そして、ウィスティールの笑い声が少し聞こえていた。

                  (この依頼・・・本当に手間がかかる・・・)

カークはどうやら、女運が悪いようだ。


あとがき
ショートストーリーです。入院中のお話。
微妙ですね!ハイ!Σ(ΦωΦ;
許してください・・・
作者:カーク・ショットさん