サイドストーリー

発端
「管理者」と呼ばれる、管理機構が破壊され、人類が地上に進出して数十年。


地上再開発計画は急速な進行を遂げ、瞬く間に人類は地上へと生活の場を移した。

その拠点である大都市「インペリアル・ポリス」と、地上各所に点在する小都市
「シティ・ポリス」の中で、厳しい環境から身を守り、なお発展を続けていた。


だが、全ての人類が地上に進出できた訳ではなかった。

石油や鉱物資源などを確保するために、地下都市「レイヤード」に残された人々。

資源と引き換えに、合成食料や電力等を地上から供給されるという、一見理想に見えるこの関係ではあった。

しかし、老朽化した地下都市の劣悪な環境に押し込められ、
それに対する地上の人間の豊かな生活に業を煮やしたレイヤード側は、地上との経済封鎖を敢行。
「レイヤード」の国家としての権益を主張したのである。


そして、地上と地下との間で起こり始めた紛争。


それは瞬く間に拡大し、地上を再び焦土と化す大戦へと
発展した。

だが、戦争は決着を見ることなく終結。

戦後、レイヤードは国家として独立。
地上側は、破壊された都市を復興し、連合して地上帝国軍を建国した。


月日は流れ―――――

経済封鎖により食料、電力供給に限界の来ていたレイヤード側は、
その問題から国民の関心をそらすため、あるスローガンを立てた。


「聖地復興」


人類は、焦土と化した地上の自然が回復するまで、地下で生活すべきである、と。

そして再び、地上帝国軍に対し戦線を布告。 
奪回軍を編成し、地上への侵攻作戦を開始したのである。

当初、戦いはレイヤード側の圧倒的攻勢が続いた。
豊富な鉱物資源と、戦後も高度なACテクノロジーを維持したレイヤードにとって地上帝国軍は敵ではなかった。

だが、レイヤードの攻勢に陰りが見え始めた頃、同時に地上軍の一斉反抗作戦が
発動した。

それにより戦況は逆転。レイヤード軍は各地で惨敗を喫し、撤退を余儀なくされた。


ここに至り、レイヤードは侵攻作戦の戦略方針を大幅に変更する決定を下した。
そして・……


その準備の為に始められた、意図不明の作戦。


新型の超高機動戦闘用ACによって編成された特別機動部隊による、
地上都市への奇襲作戦。


その局地的な作戦は、多大な戦果を上げた。


その新型ACによる、自殺行為とすら思える戦闘機動が、地上軍の将兵に与える
心理的動揺は計り知れず、そのACは地上軍に数々の異名で呼ばれ、恐れられた。

「nightmare(悪夢)」

「gold hands(黄金の手)」

「red eye(赤眼)」

「black messenger(黒い使者)」





……「god of death (死神)」



西暦2425年、12月24日未明、
この日、レイヤードは数機のACを地上軍の中枢、地上軍帝都に送り込んだ。
初期作戦目標は、帝都の強行偵察。





「ナハトファルター」による、最後の奇襲作戦となった。
作者:ヴォルカヌスさん